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みつはしみなこのインフォメーション


by minako-info

おんなのこの友情

福音館書店から
毎月1回出ている
こどものとも 年少版は
たくさんの名作絵本が生まれてきた。
きょう本屋さんで
5月号の新しい絵本が並んでいて
パッと目にしたら、手にとっていた。
(定価が380円なので
こどもにもうれしい値段。)

『パンツの はきかた』
 岸田今日子さん さく
 佐野洋子さん え

この素敵なコンビが生んだ
最新で最後の本。
表紙の絵は、ぶたさん(ちゃん?)が
白いもめんのパンツ(りぼんつき)をはいて
片方の手にお花を一輪持ち
もう片方の手には、棒に白いもめんのパンツが旗のように
干してあるのを持っている。
目をつむっておだやかな顔をしたぶたさん。
内容は、タイトル通りの
ぶたさんがぱんつをはいてゆく話し。
こどもがパンツをはくときの
からだがぐにゃらぐにゃらになりながら
懸命に挑んでいるかんじがけっさく(笑)
なんともユーモラスな佐野さんの絵に
岸田さんのことばもやさしくひょうきん。
読んでいたら、岸田さんのムーミンの声が
聞こえてきた。
自分の声で読んでいたのに、頭の中にひびくのは
馴染みのム−ミンの声。
ふしぎな気持ちになった。

折り込みふろくに、佐野さんが
“今日子さん、ありがとう”
と題して文を寄せている。
このお話しは、岸田さんのひとり娘さんが(現在は保育士をされている)
3歳のころ、娘さんにパンツをはかせながら
即興で歌っていたのを
たまたま家に遊びにいらしていた
作曲家の小森昭宏さんというお方が
そこで楽譜におこして
その当時『おはなししてよ かあさん』
という岸田さんと娘さんが親子の会話をしながら
お話しもするという構成のレコードの
1曲として発売されたものだとか。

岸田さんと佐野さんが4度目の
お仕事をご一緒しようとされていたとき
岸田さんが入院されてしまい
佐野さんもガンを再発したのがわかった。
“病室で「私、死ぬかもよ」と言いましたら
今日子さんはベットの中で静かに
涙を流してくださいました。
 日を置かず「パンツのはきかた」の絵を
頼まれました。耳に口を近づけて「私でいいの」
と言いましたら「いいのなんて」と一生懸命
おっしゃってくださり、静かに笑ってくださった。
そして、私は今日子さんのために本当に
あっという間に絵を描きました。一生懸命描きました。
病室にもってゆきました。品のいい今日子さんは
子ブタがいやかも知れないと心配でしたが、とにかく
二人ともすべり込みセーフという感じでした。”

その後、岸田さんはお亡くなりになり
担当したデザイナーの朋子さんという方が
お別れのとき、吉祥天女のようにお花にかこまれた
岸田今日子さんのそばに、出来たてほやほやの
校正刷りを抱えて走り届けたそうだ。
この絵本は、おんなのこの友情で
出来た本なんだと思った。
きのう本屋さんで見た瞬間に惹かれたのは
ぶたさんの絵に、その気持ちがたくさん詰まっていたのが
わかったからかもしれない。
『パンツの はきかた』は
お母さんみたいに
あたたかくてやさしい。
by minako-info | 2007-04-10 15:49 | from mina