2011年 09月 18日
迷子のひなどり
今週はじめ。
夕暮れ時も過ぎた頃、アパートまでの帰り道の出来ごと。
すこし遠くから見ると小さなグレーの毛糸玉か、ねずみの赤ちゃんが道のまん中にいるかと思った。
いつも通る裏道はすでに暗くなって、家路に急ぐ自転車や歩行者が毛糸玉を踏んづけそうになりながら通りを過ぎて行く。
小さな毛糸玉のそばに行くと小さな小さなひなどりだった。
丸まっているのでピンポン玉くらいしかない。
どんどん辺りが暗くなって、ひなどりが踏んづけられそうになるところを見たら、そこから動けなくなった。
近くに木々があればよいのだが周りはコンクリートばかり。
野生のひなどりを素手でさわると人間くさくなって親鳥が迎えに来なくなると、こどものときに聞いたことがある。
よしよしとかチュチュとか静かに声をかけると目をパチパチとさせてエサをちょうだい!とくちばしを大きく開ける。
かわいい。
話しかけると、ちょこちょこと動く。ちょっとずつ道のまん中よりすみっこのほうに移動してくれた。
お母さんと離れちゃったの?おなかすいてるでしょう‥などと、ひなどりにささやいていたらスースー寝てしまった。
駅前に交番があるので相談しに行きたいと思ったが、その間にひかれたら‥
頼めないかと女性の通行人に声をかけたら変な人に思われた。
無理もない。
そこへ年配の男性2人と女性1人の3人組がほろ酔いで歩いて来た。
目があったので“ひなどりが‥”と事情を話すと、偶然1人の男性が野鳥を保護して育てた経験がある人だった。
「お姉さん、ずっとここで見守ってたのか?」
と聞かれた。
「はい。引かれそうで何か動けなくなってしまいました‥」
と答えると、
「よし!ちょっと待ってて。おじさんが交番で話してくる!」
と交番に向かってくれた。
パトロール中で誰もいなかったので携帯電話から110番にかけて“ほんとうに小さい命です。小さい命を助けてください”とお願いをしてくれたそうだ。すごい。
そんなやりとりをしていたらパトロール中のおまわりさんが自転車で通りかかった。
事情を話すと交番まで連れて行くことになり、おまわりさんがひなどりに触れた瞬間、ピンポン玉くらいと思っていたひなが鳴き声をあげて羽を広げてバタバタと逃げた。
でも、まだ飛ぶことが出来なかった。
通行人や自転車にぶつかりそうになりながら、おまわりさんが捕まえて書類箱みたいな入れものに入れた。
交番で道にいた状況を話した。
もう夜だったので、翌日に野鳥保護の会に連絡をして安全な場所に離してもらうことになった。
おじさんは安心して帰って行った。
いっぱいお礼を言った。
ハトやカラスやすずめじゃないぞ!くちばしを見てごらん!すごい野鳥だぞ!と何度も話していた。
一緒にいた女性に○○さんが飼ったらいいじゃないと、おじさんはずっと言われていた。
その女性は、別れ際に“お姉さん、ぜったいいいことあるわよ!!”と力強く言って去って行った。
その日は疲れもひどく一分一秒でも早くアパートに帰りたい気持ちだった。
だけど、ふわふわのひなどりのスースー寝姿や、おじさんの一生懸命さや、おばさんの優しい一言でうれしい気持ちになっていた。
交番では、おまわりさんが自分たちの湯のみ茶わん入れを空けて、ひなどりを入れてくれた。
人の温かさにジンときていた。
ひなどりも落ちついてじっとしていた。
おまわりさんにしっかりお礼を伝えてアパートに帰った。
グレーの毛糸玉くらいのふわふわひなどりが登場する絵を、絵本をいつか描いてみたいなぁ‥
と思ったと同時に眠りに落ちました。
おしまい。
☆翌日、警察署の拾得物担当の方から電話が入りました。
飼おうなんてまったく思ってもなかったけれど、東京都も野鳥の会も規則で野鳥を飼ってはいけないことになっているから、道で見てもそのままにしておいてくださいと最初に言われた。
周りに自然もなくて、動くことも出来ないでいるのに、引かれるのをだまって見てることは出来ませんでしたと話すと、お気持ちはよく分かりますが今度からはそのままの場所にそのままにしておいてくださいと言われた。
すぐに逃げられる場所があったり、近くに母鳥がいる様子があったら絶対かまわなかった‥と心で思ったけれど、安全な場所に離してくれたことを聞いたのでホッとした。
電話をくれた女性のおまわりさんにしっかりお礼を伝えた。
昔、アパートの玄関先に目も見えていない子猫が捨てられていたことがあり、そのときは衰弱しきっていたので、すぐ動物病院に行った。
動物用の赤ちゃんのほ乳瓶でミルクをあげて、必死で飼ってくれる人を探した。
猫好きのよい人にもらわれた。
ひなどりもぶじに成長して空を飛び回ってほしい。
by minako-info
| 2011-09-18 19:04
| from mina